太陽の沈んだあとに催される行事に着用します。目安は午後6時から。 それ以降に終わる行事であれば、テールコートが最高礼装となります。 招待状に「ホワイトタイ」の指定があればテールコート着用を意味しますが、日本では着る機会がほとんどなくなりました。
「ホワイトタイ」指定の催事は、日本では皆無と言ってよいでしょう。 現在では、宮中晩餐会でも準礼装のタキシードが増えました。 目にする機会は、クラシックコンサートの指揮者、社交ダンスのダンサー。海外ではノーベル賞の授賞式がよく知られています。 なおテールコートは弔事には使いません。
ここへきて、有名人の結婚式で新郎が着用するシーンが増えたこともあり、新郎用衣装として注目されるようになりました。 格式を言うホテルでは、他社との差別化で燕尾服を見直す動きもあるようです。 結婚式で着るとすれば、新郎のほかには両家の父親まででしょう。 父親が着る場合は、新郎用にリメイクされたものではなくて、正式な燕尾服にするべきです。
「ホワイトタイ」の通称どおり、テールコートは白の蝶ネクタイと決まっています。ほかのものは使いません。 通称「ブラックタイ」のタキシードが、黒の蝶ネクタイ以外でも構わないとされているのに対し、テールコートは選択の余地がありません。
シャツの色は白のみ。ウイングカラー(立ち襟)で、前をスタッドボタンで留める両穴式のシャツが指定です。 袖はカフリンクス(カフスボタン)で留めるものを使います。袖はシングルでもダブルでも格式の違いはありません。 カフスとスタッドボタンは白蝶貝かパールが定番で、ひだ胸のプリーツシャツは使わないなど、タキシードと違う点に注意。
欧米の夜会にはダンスがつきもの。ドレスの裾を汚してはいけないと、靴墨を使うシューズを履かないのがエチケットです。 黒のエナメルパンプスか内羽式のプレーントゥが正式ですが、日本の靴屋ではあまり見かけません。 靴下は無地の黒で座ったときに素肌が見えない長めのもの、サスペンダーは白と決まっています。
夜会の正装テールコートとタキシードに合わせるズボンには、側章と言われる光沢のリボンが縦に縫い込んであります。 タキシードは1本、テールコートは2本という説もありますが、1本で構わないとするのが大勢です。
準礼装のタキシードとの違いは、100 年以上にわたりドレスコードが変わっていないことです。 ことテールコートに関しては、アレンジとかコーディネートとかいう言葉とは無縁です。 最近散見される新郎用にリメイクされたものは、正装のテールコートとは別物です。 うっかり公式の場で着用すると恥をかくことになるのでご注意を。
皇室行事では陽のあるうちに燕尾服を着ることがあります。元旦に行われる新年祝賀の儀は午前中の行事です。そのワケは勲章にあります。 大綬章はたすき掛けのリボンの先に勲章が付いているため、モーニングコートでは隠れてしまいます。 カッタウェイのテールコートはそのために考案された衣装で日本では「大礼装」とも言われます。
春秋の叙勲で特等勲章と一等勲章は、たすき掛けの大綬章です。親授式は日昼ですがモーニングコートではなくテールコートを着用します。 同伴の女性は同格のローブデコルテ(イブニングドレスの最高礼装)が原則です。日本女性は洋装のドレスに馴染んでいないせいか、最近は留袖でもよいとされているようです。 文化勲章は一等勲章ですが、たすき掛けでないのでモーニングコートを着用します。
フォーマル衣装の世界は奥深いものがあります。順次加筆していく予定です。